今回レビューする映画はこちら。
ザ・ハント
映画紹介
まだこの映画を観ていない方は、こちらの記事をご覧ください。
ざっくりレビュー
ここから先はネタバレがあります。まだこの映画を観ていない方はご注意ください。
これめちゃくちゃ面白い!
こんな面白いと思わなかった!
しかも、サクッと観れちゃうから騙されたと思って観てほしい。
序盤はグロイシーンのオンパレードなんだけど、クスッと笑わせてくれるところも。
最後はかっこいいアクションシーンと気持ちいい幕引き。
映画を観た後はみんなの考察も調べてみてください。
何気ない台詞にも深い意味があったりして、誰かに話したら博識ぶれるかも。
「反乱の後にも砂糖はある?」の台詞の意味もわかるはず。
感想・考察・おすすめポイント
1.主人公は誰?
森で目を覚ますブロンドの女性。
顔立ちも整っててめちゃ可愛い。
イケメンから銃の扱い方を習い、ちょっといい雰囲気に。
恋愛要素もあるんかい、けっ。
と思ったのも束の間、ブロンド女性の頭がパーン!
ええええ、主人公じゃなかったのか!
カメラはブロンド女性とイチャついてたイケメンを追う。
なるほど、こっちが主人公ね。
トム・クルーズに似てるし、戦いには慣れてそう。
と思ったのも束の間、偽トム・クルーズは地雷を踏んでドカーン!
ちょちょちょ、主人公は誰なん?
次にカメラが追うのは髭面の男性。
偽トム・クルーズと一緒に吹き飛んだ若い女性を助けようとするも意気地なし呼ばわり。
この女性、下半身がなくなっててめっちゃグロかった。
髭面の男性は他の仲間と合流し、柵を越えて森の外へ。
キメ顔で「状況がわかった?荘園ゲートだ」と一言。
主人公はこいつか!
あまり華はないけど、まわりの仲間を気遣うムーブはまさに主人公。
共に森を抜けた2人の仲間と一緒にガソリンスタンドで助けを求める。
ただ、このガソリンスタンドの店員、何か怪しい…
結局、髭面の男性も含め3人とも死亡。
え、主人公死んじゃったんだけど…
店員に無線が入る。
「スノーボールがそっちへ向かってる。5分で到着するわ。準備はいい?時間稼ぎしてほしい?」
「いいえ、大丈夫よ」
「そう、彼女丸腰よ。だから楽しんで」
ここでようやく真の主人公であるスノーボールことクリスタルが登場。
登場まで25分もかかった。
最初のブロンド女性が起き上がった時に少しだけ映ってたけど、主人公の登場までこんなにかかる映画ってないんじゃないかな。
主人公かと思わせて簡単に退場させる。
この手法でグッと心を掴まれた。
2.ガソリンスタンドでの軽快な会話
ガソリンスタンドでの登場人物達のやりとりがテンポ良くて面白い。
「電話ある?」
「お願い、私達には子どもや孫がいるの」
「孫がいる?写真見せて。冗談だ、電話貸せ」
アメリカっぽい。
「なあ、銃を下ろしてくれないか。ちょっと興奮してるみたいだから、間違って撃たれたら困る」
「間違ったりしない、銃は7丁持ってる」
「どうして銃を7丁も持ってるの?」
「銃で狙われた時に自分の身を守るのは憲法で認められた権利だからだ。それが今、現実に起きてる。わかったか」
「それなら、あなたを撃とうとしてる人達も同じ権利を行使してるだけなんじゃない?」
「何の話をしてる」
「反乱の後にも砂糖はある?」
「奥さん正気?」
「ああ、もちろんだよ。君は?」
次の瞬間、大福を食べた女性が苦しみだす。
この時、店員の老夫婦もちゃんとびっくりした演技してるのが可愛い。
「早く水をくれ。糖尿病ってやつだ」
髭面の男性がゆっくり振り返ると、老夫婦はすでにガスマスクを装着済み。
早すぎる。
毒ガスを投げ、髭面の男性にショットガンをドン!
実はこの会話にも深い意味がある。
詳しくは後述します。
おばあさんが無線で3人を殺したことを報告。
おじいさんが冷蔵庫にあったジュースを飲もうとするとおばあさんが驚いて叫ぶ。
「それは毒よ!」
おじいさんが盛大にジュースを吹き出す。
「ジュースに毒を入れたのか?」
「いいえ、でもその瓶の中には43gの砂糖が入ってる」
「よせよ、びっくりしたじゃないか」
「あなたを気遣って言ったことだから謝らない」
そして、キス。
「それじゃ、もっとやつけよう!」
ここの掛け合いめっちゃ笑った。
ここでスノーボールが登場。
「やあ、どうも。ご用は?」
なかなか言葉を発しないスノーボールに動揺する2人。
「たばこを1箱ちょうだい」
「ええ、すぐに」
「ガソリンは?」
「車はないの」
「じゃあ、歩いてきたのか」
突然屈むスノーボールを覗き込む2人。
「大丈夫?」
「お財布なくしちゃって。これは緊急用なの」
「マッチは必要?」
「ええ、湿気っちゃって。ここは何州?」
「なんだって?」
「質問がわかりづらかった?」
「いや、わかるけど。普通はみんな知ってるから」
このあたりは完璧に演じ切る老夫婦。
すぐに州の名前を答えないところはさすが。
「あなたがいるのは壮大なアーカンソー州よ!」
次の瞬間、スノーボールがおばあさんの頭をカウンターに叩き付ける。
すぐにショットガンでおじいさんをドン!
かっけー!
おばあさんに銃を向けるスノーボール。
「アーカンソーのたばこは6ドルなんだよ、しくじったなこのクソババア!」
ドン!
窓に飛び散る血。
最高。
店を出る時、スノーボールが上着を脱ぐんだけどスタイル良すぎてびびる。
最高。
3.「うさぎとかめ」の話の意味
車を手に入れ、ここから逃げ出そうと提案するドン。
それを断るスノーボール。
スノーボールが突然母から聞かされた「うさぎとかめ」の話を始める。
序盤はみんなが知っているうさぎとかめの話。
昼寝をして、寝過ごしたうさぎがかめに負ける話。
「その夜、かめは家族と一緒に食事をしながら子ども達にどうして勝てたか話した。諦めたりしちゃだめなんだ。前に進み続ければ何にでも打ち勝つことができる。するとドアが開いて、うさぎが入ってきた。手にハンマーを持って」
ここの2人の表情が素晴らしい。
「かめに家族が死ぬとこを見せるため奥さんと子どもを先に殺した。次はかめの番。一家を粉々に叩き続けた後、うさぎはかめ達の夕食を食べた。一口も残さずにね。だって、うさぎはいつも勝つもの」
「お母ちゃんがそんな話をしたのかい。でも、ちょっと待ってくれ。うさぎは誰だ。俺達のことか。奴らか」
そこに、森から1匹の豚が出てくる。
「あなたもシャツを着た豚が見える?」
「ああ、子豚だ」
この話はすごく深い意味がありそうだけど、ちゃんとは理解できてないかも。
冒頭のチャットのシーンでかめを足に乗せてふざけてる動画を載せてたセレブ達。
うさぎはセレブ達なのか。
これは最後のシーンにも関係してくるので後述します。
あと、このドンがすごくいいキャラしてるんだよね。
なんか場を柔らかくする感じ。
この後、スノーボールとドンがセレブ達の隠れ家を襲撃して一網打尽にするんだけど、ドンが敵の罠に嵌められる。
ドンがセレブ達の仲間であるかのように思わせて、スノーボールと仲違いさせた。
ドン、いい奴だったのに。
最後の屋敷に飾ってある獲物達の写真が11枚あるんだけど、9人の写真がはっきりと映る。
その中にドンはいなかった。
ドンっぽく見える人もいたけど、最初に殺されたスクィーラーことランディーにも見える。
真相は闇の中。
4.女性2人のかっこいいアクションシーン
グロいシーンも多いけど、アクションシーンがめちゃかっこいい!
スピード感もあって、迫力満点!
最後の屋敷のシーンの殴り合いも長尺で観てて気持ちいい。
傷は痛そうだけどね。
音楽の使い方も上手くて、殴り合いの途中でスノーボールがタイムをかけるんだけど、そこで音楽もタイムする。
で、また殴り合いとともに再開。
このあたりも観てて気持ちい要素の1つかなと思う。
そのあとの殴り合いの撮り方も素敵。
今までにあまり見たことない撮り方かも。
2人は外で殴り合いしてて、それを屋敷の中から撮ってる感じ。
なんかお洒落。
これは実際観てもらわないと伝わらないかも。
さっきのタイムもそうだけど、ところどころクスッとさせられるところもある。
スノーボールが投げたシャンパン。
映画の冒頭でセレブが言ってた1907年のエドシック。
1本25万ドルの高級品。
スピーカーとか壊されても無視してたけど、エドシックだけは「やだ!」って叫んでアシーナがナイスキャッチしてたのは笑った。
最後に勝負に勝ったスノーボールが飛行機でエドシックをラッパ飲み。
CAに「いかがですか?」って聞かれたスノーボールが「これ、超美味しい」、からのエンディング。
ここ、マジで最高!
めっちゃアドレナリン出た。
5.ジョージ・オーウェルの小説「動物農場」との関係性
この映画と密接に関係しているジョージ・オーウェルの小説「動物農場」。
この動物農場に出てくる農場の名前が“荘園農場”。
セレブ達が獲物達につけていた呼び名もこの動物農場に出てくる登場人物達と同じ。
箱から出てきた豚もオーウェルって呼んでた。
ガソリンスタンドでおばあさんが言った「反乱の後にも砂糖はある?」は、動物農場に出てくる馬のモリーの言葉。
こんな感じで動物農場の引用がたくさんある。
「動物農場」は、ロシアの全体主義に対する恐怖を風刺的に描いた小説。
スターリンとトロツキーがナポレオンとスノーボールのモデルとされている。
この「動物農場」も絡めつつ、現代アメリカにおける上流階級と庶民階級の格差や陰謀論などを盛り込んでいる。
- 「ザ・ハント」は2016年のピザゲート事件を基にしてつくった映画
- 「デプロラブル(哀れな人々)」という言葉は、2016年にヒラリー・クリントンがトランプの支持者を形容した言葉
- 髭面の男性の名前は「スタテンアイランド」。マンハッタンの南にある島で、ニューヨークで最もトランプ支持者が多い
- ガソリンスタンドでおじいさんが言った「気候変動は実際に起きてる」という言葉。地球温暖化はでっち上げと主張し、二酸化炭素規制をしないトランプやトランプ支持者に対しての皮肉。テレビも気候変動は作り話だと言っていて、呆れたおじいさんがミュートにしている
- ゲリーが言った「クライシス・アクター」という言葉。偽りの事件や事故を真実に見せかけるために演じる俳優を指す。2012年に起きた小学校での銃乱射事件は銃規制を厳しくするための偽りの事件で、リベラルがクライシス・アクターを雇ったとする陰謀論
- 動物虐待に対する批判。人間狩りはするのに豚を殺したことに怒る
- 女性差別に対する批判。女性という理由だけで情けをかけられるくらいなら死ぬセレブの女性
- アフリカ系アメリカ人に対する差別への批判。人間狩りの獲物の中にも有色人種を入れないと後で問題になると提案するも反対される
他にもいろいろ散りばめられてそう。
最後に出てきたうさぎとか。
結局、いつも勝つうさぎはクリスタルだったってことだよね。
実はクリスタルも人違いだったことが最後にわかる。
アシーナはセレブ達が人間狩りをしていると思い込んだ獲物達に復讐をするつもりで人間狩りを実際に行ったけど、アシーナもまた思い込みで人違いのクリスタルを荘園に連れてきてしまっていた。
どっちもどっちで滑稽だね。
実は深い意味があるブラックコメディ。
そんな映画でした。
コメント